<金口木舌>昼寝どころではない


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 入社直後、先輩記者に「北谷町に砂辺というところがあるから、昼寝でもしてきたらいい」と言われて向かった。ところが窓を閉め切った車内でも体がびりびりと震え、身の危険を感じた。隣接する米軍嘉手納基地を離陸したF15戦闘機の音だ

▼砂辺で暮らす当時86歳の男性は「何十年間も耳鳴りがひどい。深夜も爆音のたびに跳び起きる毎日だから」と話していた。昼寝どころの話ではなかった
▼15年たったが、基地周辺にまき散らされる騒音は変わらない。嘉手納町基地対策協議会の目視調査で、午前8時からの12時間で180回(速報値)の離着陸やタッチ・アンド・ゴー訓練などが確認された。騒音最大値は101・4デシベルだった
▼100デシベルは電車が通る時のガード下や地下鉄の構内に相当する。協議会の年1回の調査で目視確認回数は2018年が135回、17年が236回。増減はあるが、毎年ひっきりなしに飛んでいる
▼調査の日にF15の緊急着陸もあった。前日には大型輸送機C17が開閉式のパネルを開けたまま飛行し、緊急着陸した。米軍は「安全、正常かつ一般的」と声明を出したが、着陸後に整備士らが機体を点検する様子が確認されている
▼砂辺で取材した男性は「子や孫のためにも静かな暮らしを返してほしい」と話した。最低限の人権保障を求める声だ。かなえられる日はいつになるのだろうか。