<金口木舌>沖縄のオノマトペ


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 金武町伊芸で階段を踏み外した瞬間、ブチッという不快な音が体内に響いた。直後に激痛が右脚を襲う。右腓腹筋(ひふくきん)部分断裂、いわゆる肉離れと診断された

▼痛めた直後の歩き方はソロリソロリ。今はヒョコヒョコ。これらの状態を表すのは擬態語で、ブチッは擬音語だ。総じてフランス語ではオノマトペと呼ばれる
▼パラパラパラ。ダダダッ。これは射撃訓練を表す。5日、米軍キャンプ・ハンセンで迫撃砲から発射された照明弾1発が伊芸の民間地で見つかった。翌朝、住民が捜索し別の2発も見つけた。肉離れはその現場での出来事
▼射撃音は前日から断続的に聞こえ、危険と隣り合わせの住民は「事故直後に訓練か」と批判した。計3発中、2発は沖縄自動車道を横切ったとみられる。子どもの姿も見掛けヒヤリとする
▼残念ながら不快さを示す表現は紙面で頻繁に登場する。ドーンッは隣のキャンプ・シュワブからの爆発音。ゴーッは頭上の米軍機。新基地建設で名護市辺野古の海に土砂が投入されて1年余。ガラッガラッは海への石材投入だ
▼第2次安倍政権の発足からもうすぐ7年。「沖縄に寄り添う」と口にはするが、沖縄の民意を顧みることはない。耳をすますと信頼を断ち切るブチッという音が聞こえるようだ。桜を見る会と森友問題でいえばズブズブ。ニヤリ。安倍政権から浮かぶオノマトペは尽きない。