<金口木舌>羽田空港新ルートで見えてくるもの


社会
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 今年は記録的暖冬で雪が足りないスキー場も出ている。かつて怖い物知らずで滑走したスキー場のチャンピオンコースの斜面が数字の角度以上に急に感じ、クラクラしたのを覚えている

▼飛行機で降下中、たまに似た感覚を味わう。東京五輪をにらんで羽田空港の機能強化として飛行経路の見直しが進められている。騒音に配慮し従来より高い高度のルート設定になる。世界でもきつい降下角度になるという
▼どんな気分の滑空なのだろうか。専門家は操縦士の実感として「ジェットコースターで谷底に落ちてゆくような感覚」と表現する。旅客機となればスキー場のように個人のスリルでは済まない
▼羽田新ルート導入に伴い米航空大手のデルタ航空が「安全性が社内で確認できていない」として見直しルートの試験運用を見合わせた。高度を下げていく際の降下角度が「通常よりも急角度」と理由を説明している
▼実際に東京・新宿で試験飛行を見たが、旅客機が大きく迫って降りて来るように感じる。騒音や安全への懸念も払拭(ふっしょく)し切れていない。新ルート設定で障壁となった米軍横田基地の制限空域の存在はそのままだ。安全以上に大切なものはないはずだが…
▼沖縄の空を飛行するオスプレイなどの米軍機は、東京よりも低い高度で街をかすめ飛ぶように見える。東京と沖縄の空の格差を思うとまた頭がクラクラしてくる。