<金口木舌>被害の立証いつまで


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 「眠れない。異常だ」「子どもが受験生なのに何度も起こされている」。2006年7月、米軍嘉手納基地でF15戦闘機が未明の離陸を繰り返した。住民の悲痛な声を本紙が報じている

▼米軍は米本国での訓練に間に合わせるため、未明に離陸する必要があると説明した。5日間で4回の未明離陸で100デシベルを超える騒音も計測された。周辺住民の生活より基地の運用が優先された
▼未明の離陸は現在も繰り返されている。今月4日午前0時50分すぎ、嘉手納町で74・7デシベルの騒音が計測された。航空機を追跡している民間ネットワーク「フライトレーダー24」によると、同時間帯に民間機が米アラスカ州向けに離陸していた
▼嘉手納基地には所属機、常駐機に加えて外来機が頻繁に飛来し、民間機も離着陸する。米軍は運用に関する情報を公開しておらず、実態はうかがい知れない
▼県が嘉手納基地周辺に計10台の定点カメラを設置することを決めた。蓄積したデータを客観的証拠と位置付け、米軍や政府に騒音などの負担軽減を求める際の基礎資料として活用するためだ
▼県や周辺市町村は騒音激化のたびに抗議してきた。3次にわたる嘉手納爆音訴訟で騒音を違法とする判決が出ている。基地の運用実態を米軍はよく知っているはずだ。無視を決め込む加害者に、県民はいつまで被害を立証し続けなければならないのか。