<金口木舌>117年前の教訓


社会
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 コロナウイルスとの闘いを戦争になぞらえる発言をあちこちで聞くようになった。安倍晋三首相もジャーナリスト田原総一朗氏との面談で「第3次世界大戦」という言葉を口にしたという

▼対象地域が全国に広がった緊急事態宣言とも相まって異様な空気を肌で感じる。だからといって「世界大戦」を持ち出すのはどうか。戦争にかこつけた強権の横行は、弱者を苦しめる脅威となる
▼沖縄は「戦争マラリア」の悲しい体験がある。戦争や暴政の犠牲になるのは子どもやお年寄り、障がい者であることを歴史が教えている。では、どうするか。その教訓も歴史の中に求めたい
▼「コレラ病は其(その)病勢の劇烈なること猛虎のごとしといえども費用も惜しまず予防に尽力せば案外撲滅しやすき物なり」。前年に続き沖縄でコレラ流行の兆しを見せた1903年6月、本紙に載った論評である。題名は「油断大敵」
▼特別なことを言っているわけではない。117年後の今日に置き換えれば、コロナ抑止に向け財政と人力を注げということになろう。医療現場をはじめ困難と向き合っている人々を支える施策が急がれる
▼「コレラ病は能(よ)く人の油断を見すまし好んで不摂生の人を襲撃するもの」とも言っている。この一文に接し、胸が痛くなる人もいよう。当方もその一人。これを機に不摂生を改めねば。「油断大敵」を心したい。