<金口木舌>この船が向かっているのはどっちだ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 折り紙のヨットの帆をつまんで、目をつぶるとあら不思議、指先はへさきをつまんでいる。子どもの頃遊んだ「だまし船」だ

▼こちらの船はどちらに向いているだろう。河野太郎防衛相が、秋田県と山口県で進めてきた陸上配備型迎撃システム「イージス・アショア」計画の停止を表明した。安倍晋三首相は計画停止に併せて、安全保障政策を見直し敵基地攻撃能力の検討に言及した
▼寝耳に水の決定で自民党内からも不満が出る。あれは河野氏のスタンドプレーだったのか。あるいはもともと能力が疑問視されていた陸上固定型迎撃ミサイルを見限り、防衛力の「空白」を強調することで「どさくさ紛れ」の禁じ手の攻撃ミサイル配備移行の布石か
▼システムを推進するはずの米側が静かなのも不気味だ。軍事評論家の前田哲男氏は、陸上イージスの停止は、米国の中距離核戦力全廃条約(INF条約)離脱と連動したものと見るべきだと指摘する
▼昨年8月に失効して無条約下で、米国は東アジアに今後、中距離弾を配備してくる、さらにそれを自民党の国防族が下支え、日本自身による攻撃ミサイル配備へとつなげていく―と前田氏は見る
▼琉球弧では自衛隊のミサイル部隊配備が進み、まさに日米による軍事の「南西シフト」が構築中だ。かつて方便に使われた魔法の言葉「抑止力」に頼っていてはまた、船の針路を誤る。