<金口木舌>島国の苦境


社会
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 美しい海とサンゴ礁に囲まれた島。かつてはサトウキビが基幹産業だったが、今は観光が島の経済を支える。人口は約130万人。日本から約1万キロ離れたインド洋の島国モーリシャスだ

▼今、この国が苦境にある。沖合で商船三井が運航する日本の大型貨物船が座礁し、燃料の重油が大量に流出した。同国政府は「環境緊急事態」を宣言した。多くの住民がサトウキビの葉を束にして重油をかき集めているという
▼流出した海域の近くにはサンゴ礁が広がり、沿岸部には国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約に指定された地区もある。自然環境への影響は甚大だ
▼モーリシャスは英領ディエゴ・ガルシア島に住んでいた先住民族チャゴス人が、英国政府によって強制移住させられた島でもある。米軍基地建設のためだった。沖縄でも戦後、住民が収容所に隔離されている間に基地が建設されている
▼重油流出といえば1997年、ロシア船籍タンカー「ナホトカ」の事故で日本海沿岸が汚染された。環境や漁業を守るため住民らが総出で油を回収した。沖縄でも2018年、東シナ海での石油タンカー事故後に油が漂着した
▼ただ今回は日本側が被害を与えた事故だ。政府は国際緊急援助隊6人を派遣したが、これで十分とは言えまい。遠い島国の苦境をわがことと考えれば、できることは多くあるはずだ。