<金口木舌>森の神からのメッセージ?


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 新聞であってはならない誤記。ミス防止のため、記者やデスクは地名など固有名詞が過去の記事と照らし合わせて正しく記入できているか確認する

▼同じ固有名詞の表記が複数ある場合は悩ましい。もちろん一次資料に当たるが、資料がない場合、過去に圧倒的に多く記載されている表記を優先することがある
▼名護市東江区集落の後方の「ジンガ森」。1898年以降の記事を検索できるデータベースでは「銭ケ森」が84件だったのに対し、「神ケ森」は5件。「銭ケ森」の表記は定着していたが、東江区ではどちらが正しいか長年議論されてきた。区はシンポジウムを開催するなどして正しい表記を問い掛けた
▼1958年発刊の「名護六百年史」には「銭ケ森」、35年の東江部落地籍図では「神ケ森」と、一次資料の表記もばらつきがあった。そこで区が重視したのが長老たちの証言。「先輩方が神の森としてあがめてきた」
▼「神が住む森」として御願してきた歴史が、長年の論争に終止符を打った。東江に住む元名護市長の比嘉鉄也さんは「戦争中は『陣』、それから『銭』とされていたが、神ケ森に決まって良かった」と話す
▼19日、名護市が新型コロナ終息を願い、神ケ森に「結」の光文字を点灯させた。光文字に込められた、共にコロナ禍を乗り越えようという思いは、人々があがめてきた森からのメッセージかもしれない。