<金口木舌>戦世の終わり願う


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 ハワイ沖縄連合会の一大行事オキナワンフェスティバルが開催中だ。例年ならホノルルで沖縄からの訪問者と県系人が踊りや歌などを通じて交流するが、新型コロナウイルスの影響で初のオンライン開催になった。現地時間6日まで

▼1945年4月、ハワイの県系2世で米軍通訳兵の儀間真栄さん(95)は初めて沖縄を訪れた。祖父母の元で暮らす2歳下の弟、昇さんの無事を確かめる目的もあった。学徒兵の昇さんは捕虜となり、ハワイの収容所に移送されていた
▼牛島満第32軍司令官の自決により組織的戦闘が終結した後、同年7月に真栄さんは久米島へ移動した。潜伏する通称「鹿山隊」に降伏を促すためだ。鹿山隊はスパイと疑った住民を殺害し、8月だけでも2家族10人の命を奪った
▼鹿山隊は9月7日に投降した。降伏式で鹿山正兵曹長は真栄さんに近づき「(見た目から)スパイだと思った。首をはねるところだった」と告げた。狙われたことを知った真栄さんはおののく
▼強気だった鹿山隊は捕虜を表す「PW」とペンキで記された服に着替えた後、うなだれて島を離れた。住民は死の恐怖からようやく解放された
▼ハワイに移送された県人捕虜12人を弔う初の慰霊祭が3年前に現地であったが、その遺骨は行方不明のままだ。75年前からの戦世を終わらせたい。真栄さんやハワイの人々も願っている。