<金口木舌>消費を県内で


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 「電話がひっきりなしに鳴った。全て予約取り消しの連絡だ」。個人タクシー運転手の男性が2001年の米中枢同時テロの直後を振り返る。「あれから国際情勢の報道にびくびくしている」と語っていた

▼テロ後、米軍基地が集中する沖縄への旅行控えが広がった。宿泊施設のキャンセルは30万人以上になった。その後は持ち直したが、08年には米大手証券会社リーマン・ブラザーズの経営破綻により経済が落ち込んだ。そして現在はコロナ禍にある
▼帝国データバンクの発表で、新型コロナウイルス関連倒産が2月からの累計で500件に上った。沖縄の4件も含まれている
▼第3次産業を中心とする経済構造の沖縄は常に外的要因に脅かされてきた。行政の支援策に救われた事業者も多いが、それだけで全てが解決するわけではない。多くの事業者が創意工夫で乗り越えてきた
▼外食店の持ち帰り需要が高まるなど、消費傾向にも変化がある。市町村面の連載「うちなー味まーい」や「おきなわエール飯」で紹介した多くの店舗も、生き残りをかけて試行錯誤を重ねている
▼十数年ぶりに沖縄市の店でタコライスを食べ、独特の上品な味を思い出した。足が遠のいていた店を訪ねると、さまざまな記憶がよみがえるのが不思議だ。インターネット通販も便利だが、密を避けながら消費を県内に戻してはどうだろうか。