<金口木舌>家族と歩む道


社会
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 仲宗根正和さんが2期8年間務めた沖縄市長を退任して1年半が過ぎた2008年、電話があった。「正満が詩画集を出版した。取材してほしい」と言う

▼息子の正満さんは生後9カ月で、はしかによる高熱で脳性まひを発症。自由に動かせるのは右手首から先だけになった。学生時代に始めた絵や詩は、ゆっくりと刻むように描いた。沖展にも複数回入賞した
▼正和さんは「悪戦苦闘して描いてきたが、体に無理が利かなくなった。作品を形に残したい」と話した。妻の貞子さんとともに正満さんを見つめる優しい表情が忘れられない
▼能力を買われて民間から市に引き抜かれた正和さん。市長就任後も行政手腕に加え温和な人柄で慕われた。基地、経済だけでなく福祉政策にも尽力した。退任時の取材には「今後は子どもや妻のために孝行し、第3の人生をゆっくり味わいたい」と話していた
▼貞子さんは2012年、正満さんは17年、正和さんは今月21日に亡くなった。天国の道のりを再び3人で歩み、穏やかな表情で楽しんでいるに違いない。