<金口木舌>本と書店の素晴らしさ


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 スマートフォンを使うようになり、読書する時間が減った。これまでは空いた時間に小説を開いたが、今はスマホを手にする

▼それでも定期的に書店には足を運ぶ。書棚を眺めると今、何が流行しているか知ることもできる。独自のコーナーを設ける書店もあり、個性が感じられ楽しい
▼丸善ジュンク堂書店(東京都)は渋谷店が開催していたフェア「自由と民主主義のための必読書50」を政治的に偏っているとの批判を受け、中断した。従業員とみられる人物がツイッターで個人的な見解を発信したことがきっかけのようだ
▼発信意図の是非は別にして、フェアが批判で中断されたのは残念だ。例えば嫌いな作家のコーナーが設けられても素通りすればいいだけだ。それでも気に食わなければ個人的に利用しなければいい。書店に圧力をかけたり、ネットを通じ利用しないよう呼び掛けたりするのはいかがなものか
▼東日本大震災では、本や書店が特別な存在だということにあらためて気付かされた。水や食料も不足する中、復興した書店には長蛇の列ができた。流通が止まった際、仙台のある書店が1冊の少年ジャンプを回し読みさせ、子どもたちを勇気づけた
▼27日から読書週間。読書推進運動協議会が選んだことしの標語は「いつだって、読書日和」。ネットと違い、環境や時、場所を選ばない本の素晴らしさを再確認しよう。