<金口木舌>ウチナーンチュの輝き


社会
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 「1ミリも動いていない」。日本復帰50年の節目を迎えた昨年5月、命や暮らしを脅かす変わらない基地負担や復帰の内実を、批判を込めて語った報道カメラマンの國吉和夫さん。2日、76歳で亡くなった

▼70年に琉球新報社に入社した。ベトナムへ出撃するB52。貯蔵が発覚した毒ガス。重大犯罪を繰り返す米兵らが日本の法律で裁かれない不条理。人々の怒りが爆発したコザ騒動。國吉さんは揺れる沖縄を撮った
▼「タイヤとガソリンの煙と臭い、見たことのない沖縄の連中の輝き。したいひゃー。ウチナーンチュもたいしたもんだな、とっても勇気づけられた」
▼撮ることは沖縄戦から続く怒りや悲しみを感じることでもあった。拳を握り叫ぶ老婆の写真。復帰に抗議する与儀公園の集会で「ゆるちぇーならんどー」と声を振り絞る姿にシャッターを切った
▼写真集「STAND!」には小さな力で強大な権力に立ち向かうウチナーンチュの姿が写る。それは、國吉さんの生き方そのものだった。訃報が信じられない。今も檄(げき)を飛ばされている気がする。