<金口木舌>沖縄の思い主張する年に

 本題と外れた“ゆんたく”に人柄や生い立ちが表れることはよくある。作家の半藤一利さんは沖縄を訪ねたことがないという。理由は「出るんですよ」

▼「戦士の遺書-太平洋戦争に散った勇者たちの叫び」の執筆中は3人ほど出てきたそうだ。「コツン、コツンと階段を上がる音がして、上から霊ががーっとかぶってくる。『分かった、きちんと書きますから』と大声で叫んで起こされる」
▼東京は向島の出身。15歳で東京大空襲を経験した。焼夷(しょうい)弾が風を切り、ごう音とともに炎がたけり狂った。焼け死んだ人々の間を逃げた。戦後も向島に泊まると出るのだそうだ
▼戦後70年たっても体験者の記憶は鮮やかだ。戦後の人生にも大きな影響を与えた。「なぜこの戦争が起きたのか」-。半藤さんは焼け跡で抱いた疑問を「日本のいちばん長い日」「昭和史」などの著作に結実させた
▼ことしの元日、小欄で「昨年は決断の年、ことしは決断の覚悟を示す年」と書いた。翁長雄志知事は沖縄の覚悟を内外に示した。「辺野古新基地を造らせない」という言葉によって
▼越年する法廷闘争。新たな年は沖縄の思いを主張する年となろう。辺野古を「唯一の解決策」とする政府に対抗して。「なぜ、沖縄は戦後70年たっても多くの米軍基地を負担し続けなければいけないのか」。疑問は解けないまま、2015年は暮れる。



琉球新報