<金口木舌>春高バレー、西原の挑戦


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 球技に疎く、得点は単に球を打ち込んで奪うものと思っていた。しかしそれだけではなく、失わせて得るものもある

▼春高バレーに西原が挑戦した。男子は2回戦、女子は1回戦で舞台を去った。地域代表の実力校がそろう中、体格も含めた地力の差が明暗を分けるのは当然だが、勝敗を左右する流れや勢いの怖さを痛感する
▼よい潮目が突然消える。辛抱して待っても来ない波もある。男子は東洋(東京)に競り負け、女子は強豪の古川学園(宮城)に惜敗した。小さな失敗、失望、焦りや恐れが、現実の点差以上に埋め難い溝を広げる光景にカメラを持つ手指が震えた
▼知識の集積と戦略を固めたところで、躍動する生身の体と波打つ鼓動が物事を決して思い通りには進めさせてくれない。得点を阻むためのブロックを相手に利用され、アウトにされて点を失うことだってある
▼スポーツに人生を重ねる向きも多い。頭で考えてもらちが明かないことを鍛えた体と勘と強い思いで突破しようとする潔い挑戦者への、大人の感傷か。しかしボールに食らい付いて一喜一憂する姿を追う間に、そんな理屈は吹き飛ばされた
▼西原の健闘に立ち合えて感謝する。ここぞのエースもいれば、必ずボールを拾って攻撃の根幹を支える選手もいる。コートにほぼ立てなかったベンチ入り選手の姿も忘れない。