<金口木舌>冬来たりなば…


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 小学1年生の娘が窓際に立って外を眺めていた。空から降ってくる雪をかき集め、牛乳パックに詰めて冷蔵庫で冷やすのだという。雪だるまを作るつもりらしい

▼わが幼少時を思い出した。もしも沖縄に雪が降ったなら味を確かめたい。ぜんざいに載せたらおいしいはずだと想像を膨らませた。大人になって、ぜんざいは酒に変わり、東京暮らしで実行した。これでは娘を笑えない
▼寒波の襲来でネット上は沖縄の降雪情報でにぎわい、「雪を撮った」という動画が話題となった。沖縄気象台がお墨付きを与えたのは24日夜。久米島と本島でみぞれの観測を発表した
▼沖縄が日本になったら雪が降るだろうか。1972年の復帰時に、子どもたちの間で流れたうわさ話だ。雪への憧れを織り交ぜて復帰後の沖縄を想像した小学生たちは、今や孫もいる中年世代となった
▼残念ながら、みぞれの感動に浸ってはおれない。宜野湾市長選を受け、菅義偉官房長官は「オール沖縄という言葉と実態は大きく懸け離れている」と早速の牽制(けんせい)球である。官邸発の寒波が襲ってきそう
▼24日付本紙の「ウチナー漫評」は、大雪で閉鎖した普天間飛行場を掲げた。天の采配で危険性を除去したという戯(ざ)れ絵である。政府は一層、沖縄を冷たくあしらうかもしれないが、ここは踏ん張りたい。「冬来たりなば春遠からじ」と言うではないか。