<金口木舌>優しさをもらう

 東京都町田市の元市長、大下勝正さんから贈られた言葉という。「一人ひとりの人権をまもらないで/万人の人権はまもれない」。沖縄市美里の福祉作業所「ありのまま」の玄関にその色紙が飾られている

▼大下さんと30年来の交流が続く作業所に贈られたと代表の富山光枝さん(74)。障がい者が集い、共に働き、自己実現する喜びを知る。施設名「ありのまま」にはそんな思いを込めた
▼その「ありのまま」で1月30日に成人祝いがあった。新成人6人が少しずつ工賃をためて両親へ贈り物を手渡した。感謝の手紙を添えて。両親を前に読み上げた時、幾多の思いが去来したのだろう。おえつで言葉にならなかった
▼20歳に至るまでの歳月には言葉にできないつらい思いも、悲しい記憶も親子で乗り越えてきたことだろう。新成人の仲宗根賛(たすく)さんの母聡子さん(43)=沖縄市=からこんな話を聞いた
▼賛さんが幼いころ、理不尽にいじめられるのを見かねた聡子さんは「やり返せ」と言って聞かせたという。ある時、賛さんが返した言葉が今も胸に残る。「やられたら痛いんだよ」
▼聡子さんは「生まれてまだ7歳のわが子に教わった。以来、私がたくさんの優しさをもらってきた」と感謝する。「一人ひとりの人権をまもる」とは時に身の痛みを伴うこともある。純真な心が時に人を変え、社会をも変える力になる。