<金口木舌>街歩きで発見


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 土曜夜のNHK番組「ブラタモリ」が面白い。街歩きが好きなタモリさんが専門家とぶらつきながら、その土地の歴史に迫っていく。ゆったり感がいい

▼3年前、番組プロデューサーの那覇での講演を聞いた。番組には二つの柱があるそうだ。一つは、普段見ている風景の中で新しい発見をする。もう一つは、テレビでないと入れない場所や物を見せてもらう。日常性と貴重性が人気を支えている
▼ここ数年、県内でも街歩きが盛んだ。「那覇まちまーい」など各地にガイドの会が誕生し、地元密着の案内を重ねている。教育委員会や公民館主催の地域散策も多い。解説付きで歩くと新たな発見ができる
▼西原町小橋川にはペリー探検隊が宿営した丘がある。石碑には一行が1853年に描いた絵があり、それと同じ知念半島と与那原湾が目の前に広がる。往時を想像できる
▼豊見城市翁長ではブロック塀に文字を直接刻んだ「石敢當(いしがんとう)」を多く見掛ける。名護市瀬嵩の民家には沖縄戦の収容所の金網が現存する。他の地域でも、すーじ道沿いに琉球政府時代の道路標識や近世の石積み、100年超の古木が残っている
▼沖縄は小さいようでいて、一つ一つの集落をじっくり見ると実に奥深い。歩くと、日常の中に歴史が見えてくる。先人たちの息遣いが聞こえてくる。今は桜やカエンカズラが美しい時季。街歩きしてみませんか。