<金口木舌>宇宙飛行士の山崎直子さん


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 約400年前、ローマである審問が開かれた。それまで信じられていた天動説は間違いで、地動説が真の宇宙の姿だと主張したガリレオが告発された。世に言う「ガリレオ裁判」である

▼判決は太陽を中心に地球が回っているとの説が過ちだと断じ、ガリレオは地動説を撤回させられた。現代では地動説が当たり前のことと知っているが、時の権力にかかると「真実」もねじ曲がってしまう
▼「ガリレオに並ぶ成果」と評価されているのが重力波の初観測だ。アインシュタインの「最後の宿題」で研究者らが25年にわたり追い続けた。発見チームの「ガリレオの(天体)観測開始と同様に重要だ」との言葉も重みを持って迫ってくる
▼科学の世界ではいつも常識が塗り替えられてきた。光の伝播(でんぱ)に必要と信じられてきたエーテルは存在せず、物質の最小単位と思われていた原子よりもさらに小さな素粒子の研究が進む
▼宇宙飛行士の山崎直子さんは「自然科学や技術の分野は進歩しているようでまだまだ分からないことだらけ」と挑戦の素晴らしさを説く。不確実なことを解き明かそうとする探求心が新たな発見につながる
▼裁判になっている米軍普天間飛行場移設をめぐり政府は「辺野古が唯一の解決策」を繰り返す。だが返還合意から20年。政府はガリレオに倣って既成の思考に固執せず、移設問題を再考してはどうだろうか。