<金口木舌>政界のヒーローは


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 ことし洋楽の大御所の訃報が相次いだ。イーグルスのグレン・フライ、アース・ウインド&ファイアーのモーリス・ホワイト、グラミー賞歌手のナタリー・コール

▼デビッド・ボウイの訃報に衝撃を受けた。世界中から哀悼の言葉が寄せられた。「ベルリンの壁の崩壊に力を貸してくれて感謝する」とはドイツ外務省。一故人の貢献に一国が謝意を表するのは異例だ
▼理由は彼の曲「ヒーローズ」にある。ベルリンの壁のそばで落ち合う恋人たちを描いた。ボウイは1987年、ベルリンの壁の近くで野外ライブをし、「壁の向こうにいる友人たちに送る」と歌った
▼東ドイツ側にも多くの若者が集まったという。2年後、壁は崩壊する。ドイツ統一に関わってはいない。だが、彼の言葉や歌が民衆の思いと重なりエネルギーになった。ドイツ政府がそう受け止め、謝意を送ったのも粋だ
▼言葉は時に国を動かすこともある。だが最近、その重さを理解しない政治家の暴言が目立つ。自民党の丸山和也参院議員の「奴隷」発言。「黒人の血を引く」「奴隷」などと不用意に口にすること自体、政治家の資質が問われる
▼島尻安伊子沖縄北方相が「歯舞」を読めなかった件。職責を考えると「詰まっただけ」では済まされない。ドイツにとってのボウイのように、日本の政界からヒーローは望めないのか。