<金口木舌>たかが名前、されど名前

 コンビニや粗末な軒先の向こう、花鳥風月ではない「俗界富士」を撮影したのが写真家の藤原新也さんだ

▼山梨県上九一色村(当時)、オウム真理教のプレハブ施設の背にある裏富士。この山が日本人の心の象徴であるなら「その裏富士の光景は、戦後半世紀において日本という国、あるいは日本人の所業が育んだ心の絶望的な成果であるかのようにも見えた」と記した
▼防衛省発注で三菱重工業などが開発した国産初のステルス戦闘機の試作機が24日、名古屋空港で地上滑走試験を行った。通称は心神、富士の別称であり、魂を意味する。中谷元・防衛相はこの呼称に敬意を込め、将来の戦闘機開発に期待した。初飛行試験も間もなくという
▼富士で知られるのは日本画の横山大観だ。戦争宣伝を担った大日本美術報国会会長を務め、絵筆による彩管報国を率いた。富士や桜など“日本の原風景”で挙国一致に協力した。心神という言葉には横山自身の富士観が言い尽くされているという
▼武器輸出三原則緩和や防衛装備庁発足。安保法制を整備する安倍政権下で国防の名の下に「武器商人」が顕在化する。表舞台に登場したのは物騒な愛称の最新兵器
▼その先端機能は皮肉にも、レーダーが捕捉困難なステルス(英語で「こっそりした行為」の意)。たかが名前、されど名前。いつか沖縄の空を飛ぶと思えば薄ら寒い。



琉球新報