<金口木舌>研究の意義


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 この研究は何の役に立つのか、と思うことがある。研究成果を報じる場合、「何のためになるのか」という観点は判断材料になる

▼先日、慶應義塾大学と麻布大学の教授らが、オスのマウスが他のマウスの性行動のビデオを見たがるとの研究成果を発表した。マウスに「性行動」のビデオが再生される部屋と2個体が接触するだけのビデオが再生される部屋を選ばせた
▼結果、「性行動」の部屋に長くいた。報告ではマウスに「直接の利益はない」とした上で、「ヒト以外の動物が他個体の性行動を見ることを好むと初めて明らかにした」とする
▼教授らは意義として「長時間インターネットでポルノを見る問題行動」の基礎研究のための動物モデルになる可能性があるとする。今後の研究に役立つと意義が強調されることはよくある。例えば先日確認された「重力波」
▼「重力波天文学に道を開いた」とされるが何に役立つかは、今後に委ねられるのだろう。真偽は分からないが、科学者のベンジャミン・フランクリンが「電気の研究が何に役立つか」と問われ、「赤ん坊が何の役に立つか」と返したとの逸話もある
▼沖縄科学技術大学院大学でも多くの研究成果を挙げる。研究の価値はすぐ役立つかだけでは測れない。研究者に敬意を表するとともに、現在でも分からないことが日々解明されていることにわくわくする。