<金口木舌>平和な旗、物騒な旗


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 きょうは啓蟄(けいちつ)。虫が冬ごもりの地面からはい出す日だが、沖縄はここ数日初夏のごとく蒸し暑い。湿った南風の中、女子ゴルフのダイキンオーキッドが開幕した

▼5打差の18位と健闘したアマチュアの新垣比菜ら3人が決勝ラウンドに進んだ。ゴルフ好きは飽きずにひいき選手の組を追い掛けナイスプレーに歓声、時々ため息も
▼整然とした芝生を囲む深い緑野に大小の花が咲き、チョウも舞う琉球ゴルフクラブには白、青とランを表す紫の旗が揺れる。ホールでバーディーを待つのは黄色い旗。のどかなギャラリーの人群れにふと平和の二文字がよぎる
▼特定の旗がない、国歌も持たない。国際オリンピック委員会(IOC)が「難民五輪選手団」結成とリオデジャネイロ五輪への特別参加を発表した。206の国や地域と同じ扱い、五輪初の取り組みだ。IOC旗を使用するよう
▼43人の候補から6月に10人程度が選ばれる。政治性や競技性に対する疑問や批判の声もあるようだが、中東を中心に増え続ける難民は6千万人超ともはや国家規模。世界の注目を喚起する意味はある
▼9・11後、対テロ戦争を進める米国に「ショー・ザ・フラッグ」と協力を求められた日本。以来15年、安保法制整備で文字通り旗幟(きし)鮮明に進む日本は、テロや難民を生む世界と無縁ではない。平和でなければスポーツはできないとかみしめたい。