<金口木舌>速さよりも悠々と

 北海道新幹線があす開業する。北海道から鹿児島までつながることになる。戦前戦後を通して国鉄やJRの恩恵を受けていない沖縄からすると、うらやましい限りだ

▼沖縄でも戦前は県営の軽便鉄道が走っていた。那覇と嘉手納、与那原、糸満を結び、通学や買い物、行楽の足として、サトウキビ運搬車として力を発揮した。日本軍が駐屯し始めた1944年夏以降は徴用され、兵隊と弾薬を運ぶ軍用鉄道と化してしまう
▼翌45年3月23日、米軍の上陸前空襲が始まった。その前後に嘉手納線が、28日ごろに与那原線と糸満線が運休に追い込まれる。ちょうど今ごろだ。鉄道に詳しいエッセイストゆたかはじめさんは、戦火に消えたケイビンを「こんな悲しい鉄道があるだろうか」と嘆く(「汽車ポッポ判事の鉄道と戦争」)
▼2003年にモノレールが開業したものの、本格的な鉄軌道はまだだ。県の計画では年内にルート案を決める。那覇-名護を1時間で結ぶ高速鉄道で、全路線の7割が地下と聞くと、考えてしまう
▼ゆたかさんが提唱するように、車窓から景観を楽しめる路面電車の方が沖縄の身の丈に合うのではないか。広島や富山、長崎の路面電車は便利で、外来者にも使い勝手が良かった。車と併走し共存する姿が街になじんでいた
▼新幹線のような速さよりも、この島には悠々快適な乗り物が似つかわしい。