<金口木舌>「活」と「休」のはざまで


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「退活」という言葉を最近知った。「引退後の人生を豊かにする活動」を指す。小規模企業の経営者向けに退職金制度を紹介する23日付の本紙広告が、この造語を取り上げていた

▼字面を見れば「就活」の対義語に見えるが姿勢は前向きだ。充実した第二の人生のスタートを切るため在職中から十分備えよという教えでもある。定年退職にも活動が必要というのだから、うかうかしておれぬ
▼「活」の1文字を添えた造語はあまたある。「婚活」は辞書に載るほど定着した。「保活」は「保育園落ちた」のネット投稿で議論を呼んだ。子づくりや不妊治療に励む夫婦の「妊活」は2014年に話題となった
▼官製造語の類いだろうか。厚生労働省は若者の地方就職を支援する「LO活」を打ち出した。内閣官房が提唱する「ゆう活」は夕方を楽しく生かす働き方を説く。趣旨は理解できるが、政府に急(せ)かされているような気分にもなる
▼そして、人生のたそがれ時には「終活」を意識する。こんなふうに人生の節々を飾る造語を並べ、ふと思う。「休」が付く言葉の存在感が薄いのはなぜか。魅力ある造語があっていいはずなのに
▼活力ある暮らしを送るために休息の在り方を考えたい。「豊かさ」とは何かを問うことにつながる。その中で「休」をめぐる言葉を生み出そう。せっかくの人生、「休肝日」止まりではもったいない。