<金口木舌>棘であり続ける


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 「竹田の子守歌」「ブンガチャ節」「網走番外地」「手紙」「S・O・S」-。映画監督の森達也氏はかつてドキュメンタリーと著作で「放送禁止歌」の実体に迫った

▼出身や障がい、職業などに対する差別・不快語を含む歌を規制したのはメディア自身だ。差別される側に寄り添った訳でもない。物議を醸しそうな“臭い物”に勝手にふたをし、自己規制の事実も忘れた
▼オスプレイ県内配備の2012年夏、森氏は来県した。オウム真理教事件以降、国民の集団化が加速してきた日本のありようを危惧し、放送禁止歌についてはこう語った。「皆で規制を作っておきながらその主体を忘れ、誰かが作ったと思い込む。それは日本社会全般に言える」
▼「国境なき記者団」が報道の自由度最新格付けを発表した。日本は72位。ご近所では韓国70位、中国176位、北朝鮮179位。米国は41位。特定秘密保護法を施行した政権下の日本の報道は「自己検閲に陥った」「首相批判の独立性を失った」とした
▼10年に11位だった日本は12年22位、14年59位、15年62位。第2次政権発足以降に先日歴代4位へ浮上した安倍首相の在任期間と著しい下落が符号する
▼きょうで首相在任1581日。沖縄の基地や安全保障、原発問題などで報道機関の自己規制や安易な集団化が起きていないか。しつこく問い直す棘(とげ)であり続けねばならない。