<金口木舌>メーデーと燃費不正問題


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 大手メーカーの下請け会社のリコール隠しをテーマにした池井戸潤さんの小説「7つの会議」。上司から求められるノルマは「絶対」、達成は「至上命令」とされた。次第に社員は不正に手を染めていく

▼燃費性能のデータを改ざんしていた三菱自動車の社員も、達成困難な目標を課されていたのだろうか。「天皇」と呼ばれていた会長に誰も逆らうことができず、上意下達の企業風土が不正の背景にあるとの指摘もある
▼個人では上層部に意見が言いづらいケースはどの企業も多かれ少なかれあろう。意見を集約し、団体で会社側と交渉するのが労働組合の役割だ
▼しかし非正規雇用が増え、労働組合の加入率や組織率は低下した。個人の声は上層部に届きにくくなっている。さかのぼれば成果主義を掲げた小泉改革が起点だった。終身雇用、年功序列の崩壊は個人主義をもたらした
▼きょうは労働者の祭典「メーデー」。復帰前の沖縄では、米国民政府が「メーデーに参加する者は共産主義」との声明を出し、メーデー参加者は解雇されたり、本土への渡航許可が下りなかったりした。参加者も覚悟の上で声を上げた
▼働く人の生活の向上がメーデーの主眼。先人が身を賭して獲得してきた団結権などの権利をいま一度見詰め直し、職場環境の改善につなげたい。会社存続の岐路に立たされてからでは遅い。