<金口木舌>考える動物園に


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 キリンは高い所の葉っぱなどを食べるため、首が長くなったという。水を飲むときには、長い足を左右に広げてかがむ。いかにもきつそうで、これが進化にかなっているのか疑問も湧く

▼動物の進化や特徴には分からないことがまだある。ゾウには、下唇はあるが上唇はない。「上唇が伸び、その上に鼻があるのでは」。沖縄こどもの国(沖縄市)の高田勝園長が立てた仮説だ
▼「動物園を見るだけの場ではなく、楽しく考える場に。その方が理解は進む」。その視点に沿った観覧スタイルや動物の紹介でも工夫を凝らし始めた。キリンが水を飲む姿勢を進化の面から観覧者にどう伝え、考える機会を提供するか。飼育現場で模索する
▼沖縄は環境、歴史、民俗などに特徴があり「他の地域の動物園より潜在力があり、優位にある」とも。琉球犬や与那国馬など、琉球弧の在来家畜の文化情景展示は、沖縄こどもの国ならではのものだ
▼さまざまな取り組みが功を奏し、2015年度の入園者は45万人を突破した。来園者の9割以上を地元客が占める。1990年に49万人を記録、その後低迷した時期もあった。知恵と工夫でのV字回復である
▼その背景には、昨年3月に誕生した子ゾウの琉美(るび)ちゃん人気もある。「あれは鼻じゃなくて上唇では」。親子で考えを巡らし、不思議への好奇心をときめかせるのも楽しい。