<金口木舌>「慰霊の月」を迎えて


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 昨年5月、大阪市の繁華街であった不発弾処理の費用を地主に負担させるのは不当だとして、地主男性がいったん納めた処理費580万円の返還を市に求めて裁判を起こした。本土紙が報じている

▼「不発弾処理は戦後処理の一環。行政が責任を負うべきだ」という男性の言い分は当然に思えるが、不発弾処理経費の負担先を定めた法令はない。自治体で対応はまちまちという
▼「訴訟の行方は戦後処理の在り方に一石を投じそうだ」と記事は記す。日常的に不発弾処理が続く沖縄から見ても気になる裁判だ。戦争を引き起こした国が果たすべき責任を考える契機となる
▼「もはや戦後ではない」が流行語となったのは60年前。歴史認識を巡る隣国との対立を見ても、まだ戦後の決着はついていないと気付く。為政者は国民を惨禍に巻き込んだ罪と向き合い、行動する責任がある
▼オバマ大統領は広島の演説で核廃絶の決意を語った。原爆を投じた国の責任である。演説をそばで聞いた安倍首相の責任とは何か。せめて「再び日本人を戦場で死なせないで」という国民の声を聞いてほしい
▼きょうから6月、沖縄は戦後71年の「慰霊の月」を迎えた。私たちは、安倍首相が「希望」と呼んだ日米同盟による惨劇と向き合う。沖縄戦犠牲者と基地あるが故の犠牲者を悼む焼香が続くだろう。平和と命を守る祈りを重ねたい。