<金口木舌>百万枚が待ち遠しい


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 「障がいがあっても、私はみんなと特に変わらない」。車いすシンガーの謝花勇武(いさむ)さん(37)=宜野湾市=は、そんなメッセージを歌に込め、オリジナルCDを無料配布している。2014年7月から始めて来月には2万枚を超すという

▼生まれて間もなく脊髄性筋萎縮症と診断された。病院生活の余暇活動で出合ったのが音楽。それを自らの表現手法にして20年が過ぎた。現在はバンド「コンスタントグロウ」でボーカルを務める
▼今はよほどのメジャーでなければ、CDも売れない時代。それでも「多くの人へ音楽を届けたい」。考えた末、売らずに無料で配る方法に思い至る。「ミリオンセラーではなくミリオン配布」と言う
▼CDの制作費を工面するのは容易でない。そこで市民に呼び掛けると個人から多くの支援が寄せられた。それが2万枚の制作資金となり、多くの支援者にもつながった
▼CDにはバンドメンバーと大切にする5曲を収録した。1曲目は「さくらはまだか」にした。「どんな魔法でも/生まれ変わるはずない/そして開き直ってみて/私は私らしく生きる」
▼収録曲は、障がい者の心の言葉を社会へつなぐ歌になった。最近、街頭で声を掛けられることが増えた。「CD聴きました」「涙が出てきた」。歌が人々の心へ届く喜びを実感する。配る手にも力が入る。いつか100万の共感になる日が待ち遠しい。