<金口木舌>きっぱりと語る首相

 いつからだろうか。首相の記者会見が夕方6時台のニュースの時間帯を狙うようになったのは。時に、さほど重要でもない内容を延々と生中継することもある

▼とっくに報道済みの消費増税再延期を表明した1日の会見も、その類いだった。「新しい判断」という新語で「公約違反」を覆い隠す弁明を繰り返した。都合のいい数字を並べ立て、自己陶酔するように30分間語り続けた
▼安倍晋三首相は強い言葉がお好きのようだ。2年前は「再び延期することはない。断言する」「財政再建の旗を降ろすことは決してない」と言い切った
▼「辺野古が唯一」「汚染水は完全にブロック」「戦争に巻き込まれることは絶対にない」「この道しかない」。他にも「必ず」「全く」「断じて」をよく使う。勇ましい言葉の大安売りだと、眉に唾をつけたくなる
▼こんな詩がある。〈気をつけたほうがいいのだ、/何事もきっぱりと語るひとには。/です。であります。なのであります。/語尾ばかりをきっぱりと言い切り、/本当は何も語ろうとしていない。/ひとは何をきっぱりと語れるのか?〉
▼詩人・長田弘さんの「嘘でしょう、イソップさん」の一節だ。詩は続く。〈語るべきことをもつひとは、言葉を/探しながら、むしろためらいつつ語る。〉。口先だけでなく、心からの本物の言葉を語れる一国のリーダーはいないものか。