<金口木舌>「障がい者=感動」に疑問


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 リオ・パラリンピックのプロモーション動画がかなりかっこいい。水泳、短距離、アーチェリーなどに、手足が不自由な選手が次々と登場する

▼車椅子を操りシュートを決めるバスケットの選手。片足で助走、ジャンプする走り高跳びの選手。義足で走るランナー。鍛えられた体で勝負に挑むその姿は、アスリートそのもの
▼そんな動画を見ていると、これまで記者として何度となく書いてきた「障がいを乗り越えて、〇〇を達成」という「障がい者=感動、やる気を与える存在」の記事に恥じ入る。彼らはできることを工夫してやっているだけ。感動を与える意図はない
▼豪州の車椅子利用者でジャーナリスト兼コメディアンだった故ステラ・ヤングさんは障がい者について「健常者に自分の人生は最悪だけど、もっと大変な人もいるんだと思わせる存在だ」と言及。さらに「私が住みたいのは、障がいが普通だと思われる世界で、障がい者が真の成果で評価される世界です」と望む
▼Eテレの福祉バラエティー番組「バリバラ」が「検証!『障害者×感動』の方程式」をテーマに取り上げた。障がい者自身、「感動の押し売り」報道に違和感を感じている
▼リオ・パラリンピックが開幕した。報道する側も、どう報道するかを試されている。大事なことは観戦を通して、障がい者に対する自分の内なる偏見に気付き、改めることだ。