<金口木舌>見飽きた滑稽劇


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 詩人宮沢賢治が「農民芸術概論綱要」に記している。「誰人(たれびと)もみな芸術家たる感受をなせ/個性の優れる方面に於(おい)て各々(おのおの)止むなき表現をなせ」

▼賢治は当時の岩手県花巻で農業技術を伝え、農民の幸せにも思案をめぐらせた。「農民芸術概論綱要」の意味について作家平田オリザさんは、芸術に触れて「感性を磨き、文化の自己決定能力を身につけさせるためではなかったか」と、著書「下り坂をそろそろと下る」で説く
▼沖縄市でも、そんな芽生えを感じさせる演劇が公演された。劇団チョコ泥棒が政治風刺劇に初挑戦した。主宰者の兼島拓也さん(27)は、辺野古や高江など敬遠されがちなテーマと自覚しつつ「知らないふりはできない」と話す
▼全6作品の劇に声高な主張はなく、余韻を残し閉幕する。「君はオーガニック」は有機食品とジャンクフードと趣向の違う男女の意見が対立するが、どちらが正しいのかは示さない
▼兼島さんは「コメディーなので観客には楽しんでほしいが、もやもやもしてほしい」と言う。劇を見た観客自らが考えて決めてほしい。そんなメッセージを込める
▼一方、辺野古問題を巡る滑稽劇を見飽きた方もいよう。幾度の民意を示しても背を向ける政府が演者。民主主義というせりふがどうにもなじまない。劇が生々しく、たちも悪い。大根役者ぞろいの上に台本自体も間違っていないか。