<金口木舌>「15年戦争」の起点の日


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 1941年12月8日のハワイ・真珠湾などへの攻撃で始まった「太平洋戦争」。これに対し、31年9月18日を起点とする「15年戦争」史観がある。「満州事変」が始まった日からあすで満85年になる

▼日本の関東軍が中国・柳条湖で南満州鉄道の線路を爆破。これをきっかけに満州(中国東北部)全域を占領。翌年、満州国を建国した
▼中国・瀋陽の事件現場近くに「9・18歴史博物館」がある。そこを訪ねた際、「偽満州国」という言葉を知った。かいらい国家「満州国」は、中国にとって、日本による侵略の象徴である
▼30年代、軍部の横暴が強まり、政党政治は崩壊する。言論統制が進み、新聞は対外膨張をあおった。満州国には、ひともうけしようと商売人が流れ込み、疲弊した農村から開拓農民が送られた。沖縄からも多くの人が渡った。そして、敗戦時の引き揚げで辛酸をなめる
▼「日本は30年代に似てきた」と指摘されて久しい。軍事強化が進み、自衛隊を海外に出す。嫌中・嫌韓のヘイトスピーチには戦前と変わらないアジア蔑視がある
▼「日清、日露戦争、満州事変と沖縄戦はつながっている」と強調してきた琉球・沖縄史研究者の又吉盛清さん。18日を挟んで、全国の研究者らを連れて植民地支配と戦争を学ぶ中国の旅の途上だ。歴史を学び相互理解を深めることが平和構築の第一歩になる。