<金口木舌>妊娠・出産期のケアを


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 7月に那覇市内のベンチに、生後間もない赤ちゃんが置き去りにされたことが報じられた。その件について先週、読者から電話があった。「その後、赤ちゃんはどこでどう過ごしているのでしょうか」と問われた

▼何か乳児について心当たりがあるのか尋ねると「ない」との答え。続報がなく、気になって電話したという
▼最後の記事掲載は保護から1カ月後の8月4日。児童相談所で養育されており、親に名乗り出るよう呼び掛ける内容だった。気になっているのは、置き去りにした親も同様だろう
▼親の側にはよっぽどの事情があったのかもしれない。乳児がくるまれていた衣類は、5歳児用の上着だった。状況からすると年上の子がいて、初産ではなかったと推測する
▼望まぬ妊娠という場合、一般的に10代が多いと思われがちだ。しかし厚生労働省の衛生行政報告例によると、妊娠中絶の年齢層は、全国で10代と40代以上がほぼ同数。恐らく経産婦でも中絶を選択せざるを得ない人たちがいる
▼乳児の親探しも大事だ。併せて妊娠中から出産後まで女性、または男女双方をケアする体制づくりも急がねばならない。親が育てられない場合の子の養育について、養子縁組の手続きの緩和なども必要だ。電話の主の読者は「衣類などを差し入れしたい」と話していた。その子が愛情に育まれ育つことを切に願う。