<金口木舌>大砲よりバターを


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米大統領選は、トランプ候補の過去の女性蔑視発言が局面を大きく変えようとしている。あまりに低俗な言動に、身内の共和党内も見限る動きが止まらない

▼日本でも大臣の過去の発言が国会で追及された。稲田朋美防衛相が2011年に雑誌の対談でこう述べていた。「子ども手当分を防衛費にそっくり回せば、軍事費の国際水準に近づきます。自分の国を自分で守ることを選ぶのか、子ども手当を選ぶのかという国民に分かりやすい議論をすべきでしょうね」。撤回はしなかったので本音なのだろう
▼日本の防衛費は15年が4兆9482億円と世界8位(ストックホルム国際平和研究所調べ)。16年度は初めて5兆円を突破し、17年度概算要求では2・3%増の5兆1685億円と青天井だ
▼一方、教育への公的支出は経済協力開発機構(OECD)33カ国中32位。大学授業料の無償化も、国の給付型奨学金もないのは日本だけだった。他にも貧困や待機児童、保育士・介護職の待遇改善など、優先すべき課題は多い。戦闘機1機を買う予算で、どれだけの人が助かるだろうか
▼ナチスは1936年、「バターより大砲を」という4カ年計画で軍拡路線を突き進んでいった。軍事に手厚く、福祉・教育に冷たい国の末路は歴史が証明している
▼ナチスに学べと勧める副総理もいる政権だが、時代錯誤は国民の未来を奪う。