<金口木舌>人とつながる力


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 教育が寺院で行われた起源は鎌倉・室町時代にまで遡(さかのぼ)る。江戸時代になると武士や僧侶、医者らが寺子屋を経営し、庶民の子弟へ読み、書き、そろばんを教える初等教育を担った。通う子弟を寺子といった

▼そんな現代の寺子屋が沖縄市の海邦町にできて3年目になる。公民館を開放し、年会費千円を納めれば毎日参加できる。「放課後子ども教室」の位置付けで「海邦町マンタ寺子屋」と名付けた
▼学校ではなく、公民館でほぼ連日の運営は市内でも唯一だ。学年の違う児童生徒が集い、親も交え「人とつながる力」を育む。その力は将来の地域づくりへの期待でもある
▼毎日約30人の児童生徒が共に宿題をしたり、エイサーを教え合ったりする。子ども同士が学びの場をつくる。思い出すのは地域も含め「みんなの学校」として注目を集めた大阪市立大空小学校だ。映画にもなった
▼同小学校の初代校長木村泰子さんは、子ども同士の学び合いを尊重した。障がいのある児童も一緒に、分け隔てない学びが支え合いの心を育み、ひいては不登校ゼロ、対策せずとも学力テストも上位の秋田を上回る成績だったとか
▼考えてみれば、違いのある人同士の「つながる力」を養うのは学力テストよりずっと難問だろう。世代や障がいの有無を乗り越え、地域で共にどう生きるか。時代に最適な答えは現代の寺子屋にあるかもしれない。