<金口木舌>大宜味産和そば


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「沖縄産の日本そばを食べてみませんか」と言われて驚く県外の人が多い。冷涼な土地の作物と思っている人が多いソバだが、沖縄では比較的涼しい時期に台風を避けて栽培できる有望作物だ

▼大宜味村では「大宜味産和そば」を商標登録し、特産品として定着させてきた。大宜味村蕎麦(そば)生産組合(平良幸太郎組合長)の3農家が2月、10月の年2回種をまき、2カ月半ほどで収穫する。今年の秋まきはやや遅れ、11月上旬の予定だ
▼本格的に生産が始まったのは2008年。10年に生産組合が発足した。今では3農家で11ヘクタールに作付けし、年間4トンを生産する。耕作放棄地活用の成果としても評価されている
▼平良組合長は「きっかけは赤土流出対策だった」と語る。九州沖縄農業研究センターの指導でいろいろな植物を試したところ、成長の早いソバが有望だと分かった。食べてみたら「いける」。「和そば」の産業化が始まった
▼「品種選びに3年掛かった。何十品種か試したんじゃないかな」と平良組合長は振り返る。「雨が多いと穂で発芽してしまう。だから七分くらいで収穫している」。早刈りで青みが美しく、強い粘りと独特の香りが特長だ
▼村内のほか那覇の日本そば店にも提供しており、6次産業化の成功例になった。販路を拡大し生産量が増えれば、「和そば」が沖縄の食の魅力に加わるだろう。