<金口木舌>平成の人類館


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 沖縄人が沖縄人を調教する。1976年、戯曲「人類館」初演の舞台で、内間安男さんは調教師を演じた。演技を通して直面したのは、自分の中のヤマトがウチナーを差別する「内なる差別」と、本土から沖縄への根深い差別だ

▼内間さんは復帰運動に没頭後、広大な米軍基地の存続に深い挫折感を味わった。普天間基地の県外移設が拒絶される現状を「人類館」と重ねる。「基地を拒むことでヤマトは今も沖縄を差別している。人類館は今も生きている」
▼演劇「人類館」上演を実現させたい会は2005年に「人類館-封印された扉」を出版した。その中で社会学者の野村浩也氏は、人類館は過去の出来事ではなく、沖縄人は今も人類館的視線の巨大な檻(おり)の中に展示されたままだと断じた
▼その視線の暴力は「沖縄人を『調教』する権力であり、日本人の見たいものへと沖縄(人)を改造しようとする」。青い海や唄・三線に癒やされる島「沖縄」。それらを消費する一方で、基地問題への加害性に目を背ける国民は多い
▼沖縄には今、ネット上や街頭で暴言が吐かれ、政治家からも侮蔑発言が相次ぐ。高江や辺野古の新基地に反対する現場で市民は弾圧を受けている
▼「土人」発言と大阪府知事の擁護は、「平成の人類館」が露骨に扉を開いたように映る。連綿と続く沖縄差別と決別する覚悟がヤマトに問われている。