<金口木舌>うとぅいむちしましょうねぇ


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 冷房の効いた部屋の扉が開いている。「クーラーが逃げるよ」「クーラーに足があるのか」。沖縄のお笑い芸人がよく使うネタだ。沖縄独特の言い方が笑いを誘う

▼世界若者ウチナーンチュ大会でもこんな場面があった。帰り際に何人かが「先なろうねぇ」。違う国で育った若者たちから同じ言葉が出た。イントネーションも同じ。みんな思わず笑った。母県の表現が各国の県系人に受け継がれている
▼これも沖縄的だ。訪問先の相手に「今から来るよー」。物をもらって「Aさんが私にあげよった」。「行く」と「来る」、「くれる」と「あげる」の混同だが、どちらも相手の立場から見た表現だ。間違った日本語と目くじらを立てず残していきたい
▼相手目線での言い方はまだある。子どもを叱る時も「たたくよ」ではなく「たたかれるよ」。品は悪いが「こーさー くゎーさりんどー」(げんこつを食わされるよ)もそうだ
▼うちなーぐちでは、教えることを「習(なら)ーすん」、貸すことを「借(か)らすん」と言う。相手の気持ちを我が事として捉える意識が自然に働くのだろうか。先人たちの精神が日常の言葉に息づいている
▼最近、相手をさげすむ言葉がこの島で発せられた。その対極にある沖縄独特の言い回し。ウチナーンチュ大会で帰ってきた県系人との交流では、他者を思いやる「うとぅいむち」(おもてなし)の心とともに、思う存分使いましょうねぇ。