<金口木舌>高江の森に響く歌声


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 暗く深い森の中。透き通るような歌声が響き渡った。紡がれたのは「殺人マシン」として育てられたコンゴの少年兵の物語など

▼10月22日、東村高江で開かれた「高江音楽祭」で、ミュージシャン七尾旅人さんのライブを見た。高江に住む「ヘリパッドいらない住民の会」の石原岳さんと親交があり、何度も高江を訪れている。8月には建設に反対する市民が座り込む「N1裏」のテントでもライブした
▼「数十年ぶりに出るかもしれない戦死者Aくん」と紹介し、歌った「兵士Aくんのうた」。昨年11月、東京でのライブで初披露された。歌では「Aくん」が「友達」や「弟」「わたしの子」である可能性が示され、「この国の どこかで まだ 君が生きている」と締めくくる
▼ヘリパッド建設が進む現状を「異様で常軌を逸している」と七尾さん。「約9年前に始まった運動を力づくで潰そうとしてる。早ければ来月にも南スーダンで戦死者が出る。全てつながっている」
▼七尾さんの言葉は、県民の声を無視して着々と進む工事に傷つく人や、戦争のできる国に突き進む政府に憤る人の心に寄り添う。共演したバイオリニストの勝井祐二さんは「土人」発言を知り、「いても立ってもいられなく」なり駆け付けた
▼現場の状況が県外に伝わらないと嘆く声を聞く。建設に反対する人々の思いが、着実に広がりつつあると感じた一夜だった。