<金口木舌>てっぷーコレクション


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 京都で研修中だった沖縄の高校教諭が電車内で体調を崩したお年寄りを見掛けた。放っておけず、家まで送り届けた。古い長屋の天井には多くの鳥の標本がぶら下がっていた

▼ヤンバルクイナを発見した名護市の友利哲夫さん(83)の40年以上前の体験だ。介抱した相手は、日本の剥製作りの第一人者で「坂本式」で知られる坂本三六さんだった。生物教師として剥製作りを学びたいと思っていた矢先に出会った師匠。「運命だと思った」。いい教材作りのため、長期休みの度に京都に通い、最高峰の技術を教わった
▼その後、いい教材への探求心は写真に向かう。山中に5日間こもってイリオモテヤマネコが捕食する姿を収めたり、腹ばいで何時間も汚水につかりながらヤンバルクイナを撮影したりした
▼生来の生物好きと根気強さが結晶となった作品は、動物たちの命が輝く瞬間を見事に捉えている。こうした貴重な192点を集めた写真展が出身地の本部町立博物館で20日まで開かれている
▼ご本人は「剥製も写真も趣味ではなく、教材作りで必要に迫られたもの」と控えめだ。教員生活の原点には「生徒が感動できる教材」があった
▼常に生徒目線に立つ教え方は好評で、今でも教え子から「てっぷー先生」と慕われている。田畑やダムで野鳥を追う活動はなお現役だ。「てっぷーコレクション」は増え続けている。