<金口木舌>東アジア出版界に開く窓


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 「黒船」が来たような驚きだったのではないだろうか。「東アジア出版人会議」が、6番目の地域として沖縄に加わってほしいという。そして、沖縄で会議をしたいと。日本、韓国、中国、台湾、香港の人文書出版のリーダーたちである。昨年6月のことだ

▼県内の関係者で議論が始まった。受け入れができるのか、小さな沖縄が他の地域と伍(ご)していけるのか。県文化振興会の支援で予算が確保され、この14、15日に沖縄会議が実現した
▼二十数社が競い合って「沖縄県産本」を作っている140万人の市場。東アジアの出版人たちは、その豊かさ、レベルの高さに驚いた。そして独自の出版文化を持つ地域として仲間に迎え入れたのである
▼年2回集まり、共通の課題や翻訳出版を巡って昼夜議論を重ねる。そうして、国の枠を超えた個人同士の信頼関係を築いていることが、この会議のすごさ、面白さだ
▼早速、県産本の翻訳出版がいくつか進行している。韓国で沖縄の著者による新刊企画も始まった。16億人の市場を実感できたことは大きい
▼政治や歴史認識を巡って険悪さが漂う東アジア。沖縄が加わることは相互理解に新たな深まりを与えるはずだ。そして、沖縄から世界に発信する足場になる。財政面など困難は多々あるだろうが、交流が継続できれば、さまざまな成果が生まれるに違いない。