<金口木舌>偏見に歴史認識の壁


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 「沖縄ではゴキブリを食べているの」。東京で学生時代を過ごした22年前、東京出身の同級生にこう聞かれて驚いた。沖縄出身者が「日本語うまいね」と言われた体験も多く聞いた

▼東京報道部にいると、今も沖縄への偏見や誤解が再生産されていると感じる。「基地反対はお金目的」「基地がないと沖縄の人は食えない」…。挙げればきりがない
▼フランスの思想家ルソーは「理性、判断力はゆっくりと歩いてくるが、偏見は群れをなして走ってくる」と言った。偏見を生む要因の一つに、沖縄の歴史を知らないことがある
▼「歴史問題の克服が基地問題に取り組む基盤になる」。元外務省沖縄担当大使の橋本宏さんは「沖縄県民の歴史認識を考える会」を東京で発足させる。政府と県が共同で「賢人会議」(仮称)を設け、歴史問題に向き合うべきだと提起する
▼確かに、本土では沖縄の歴史を知らない人が多いと感じる。メディアもほとんど報じない。「琉球処分」や沖縄戦、サンフランシスコ講和条約など沖縄の歴史への知識不足が、基地問題への理解を妨げているように思う
▼ローマ法王の故ヨハネ・パウロ2世は「過去を振り返ることは将来に対する責任を担うことだ」と説いた。大切なのはまずは知ること。本土の人々が沖縄の歴史に目を開くことは、沖縄の人々に寄り添う目線で基地を見ることにもつながる。