<金口木舌>諦めない心を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 欧米では、鶏の鳴き声には悪いものを追い払う力があるとされる。グリム童話の「ブレーメンの音楽隊」にはロバ、犬、猫、鶏が登場する。鶏は鳴き声で泥棒を追い払った

▼鶏はキジの仲間の中で一番の美声の持ち主と言われる。酉(とり)年の今年は、干支(えと)にあやかり、その美声で沖縄を取り巻く不穏な要素を追い払ってほしいものだ
▼今年、沖縄は日本復帰から45年、サンフランシスコ講和条約の発効で本土と切り離されて65年の節目を迎える。2013年に政府が「主権回復」の式典を開いた際、県内からは「里子に出された日を祝うのか」との声も聞かれた
▼里子が古里に戻り45年がたつ。昨年は県内の観光客数も伸び、有効求人倍率は統計開始以来初めて1倍を超えた。景気は数字上、上昇傾向にある。一方で里子時代の後遺症の基地問題は引きずったままだ
▼一方、出生率の高い沖縄は人材の宝庫。リオデジャネイロ五輪の重量挙げでは、糸数陽一選手が日本新記録で4位入賞した。仲里進選手は、パラリンピックの車いすラグビーで銅メダルを獲得、空手では喜友名諒選手が世界選手権で2連覇するなど活躍した
▼ブレーメンの音楽隊は、飼い主から見放された動物たちだった。見放されても一致団結して新たな活路を見いだした。スポーツ選手にも通じる諦めない心を持ちたい。新年にその決意を新たにする。