<金口木舌>将来ビジョンを描こう


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 開発途上の国々に土地を提供し、移住してもらう。この「逆植民地」では「逆宗主国」が施政権を持ち、地域社会の経営に責任を持つ。行政、警察、学校なども移し、移住者は自らの言語を使い、自国のような生活ができる

▼社会学者の橋爪大三郎東京工業大名誉教授が唱える「日本逆植民地計画」だ。日本の人口は2060年には推計8千万人台まで減る。1億2千万人が暮らすインフラが整った日本は4千万人の外国人を受け入れ可能とみる
▼人口減と少子高齢化で働き手が減っている。帝国データバンクの県内企業動向調査では、過半数の企業が正社員の人手不足を訴えた。全国では経営が黒字なのに人手不足で事業所の閉鎖や営業時間の短縮に追い込まれた企業もある
▼人口減に加え、格差や分断が広がる日本社会を救いたい-。橋爪氏の問題意識である。構想には「正気か」との反応もあるそうだが、提案の狙いは危機突破の知恵を喚起することにある
▼政府の景気対策は、公共事業と補助金ばらまきなどの繰り返し。その結果、「国の借金」はついに1千兆円を超えた。橋爪氏は経済再生ができない理由は将来プランの欠如と断じる
▼発想を転換し、大きなビジョンを結集すれば、根本的課題を解決する具体策が見えてくる。内向き志向といわれる日本社会に夢や希望を取り戻そう。これも新年の誓いにしたい。