<金口木舌>ハチドリのひとしずく


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 今年は酉(とり)年。地球上には約1万種の鳥が生息する。世界最大は2メートルを超すダチョウ、最小は5センチ前後のハチドリの仲間だ。そのハチドリにまつわる話が南米アンデスにある

▼森で火事が起きた。動物たちは一斉に逃げた。1羽のハチドリだけは、くちばしで水を1滴ずつせっせと運んでは火の上に落としている。動物たちは「そんなことをして一体何になる」と笑う。ハチドリは答えた。「私は、私にできることをしているだけ」
▼「ハチドリのひとしずく」という話だ。大きな問題に直面すると、人は自分一人では何もできないと無力感にさいなまれがちになる。環境破壊や貧困、差別。基地問題もそうだ
▼辺野古や高江で政府は強大な権力を使って民意をつぶそうとしてきた。機動隊投入、自衛隊ヘリによる資材搬入、リーダー逮捕など、他府県ならできないような弾圧を繰り返している
▼ともすれば、国には抵抗しても無駄だと諦めかけてしまうが、歴史は一人一人の小さな行動が肝心だと教えてくれる。米国の黒人差別撤廃も、インドの独立も、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)撤廃も、ベルリンの壁崩壊も、個々の市民が声を上げ行動し始めたからこそ、歴史の歯車を動かせた
▼オスプレイという鉄の害鳥とその巣窟を追い払うためには、今年もこの島に住む一人一人の「ハチドリのひとしずく」が試される。