<金口木舌>光と風の建築


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 昨年暮れに77歳で亡くなった建築家、国場幸房(ゆきふさ)氏。夜ごとなじみの店をはしごして「幸房パトロール」と称していたという。初対面の金口子にも気さくに語り掛けてくれた

▼出世作のホテルムーンビーチをはじめ、沖縄県公文書館、宮古空港ターミナルビル、美ら海水族館などを手掛けた。多くがコンペを勝ち抜いた作品だ
▼「パレットくもじ」で一緒に仕事をした都市計画の環境設計が専門の謝花寛営氏は「沖縄の風土の中に溶け込む建築」と表現する。本人はそれを「光と風の建築」と呼び、「その地域の素材を生かした沖縄の一般的な家庭料理を建築的に具現化したもの」と例えた
▼告別式では出席者に作品集「国場幸房とその世界」が手渡された。主な作品の紹介のほか語録、年表などがぎっしり収められ、遊びにも熱心だった人柄を、建築思想とともに伝えている
▼昨年6月にがんが見つかり、手術するも「余命2~3年」と言われた。作品集に取り掛かったところで転移が見つかり、11月初めに「余命2~3カ月」と告げられた。20日間で仕上げた作品集は「完成度9割程度」とし「ゆっくり改訂されることを願う」と後輩に託した
▼那覇市役所本庁舎は最後のコンペ作品。大胆な壁面緑化が特徴で、植物の成長を楽しみにしていた。希有(けう)な建築家の作品が緑に包まれていくさまを見つめていきたい。