<金口木舌>アナログの味

 世界最大手の写真用品メーカー・コダックが2012年に製造を中止したカラーフィルム「エクタクローム」を再発売すると発表した。デジタルカメラ全盛の時代に逆らうような珍事だ

▼写真愛好者の間で昔ながらのフィルムの人気が再燃しているという。音楽業界でも似たようなことが起きている。この数年、アナログレコードやレコード針が増産を続けている
▼気軽に上質の映像や音楽を手に入れるのならデジカメやCDに軍配が上がろう。それに満足しないのが趣味人のこだわりというもの。デジタルでは望めない「味」や「深み」をアナログの世界に求める
▼人の場合はどうだろう。デジタルに疎いアナログ世代の持ち味を考えたい。効率や合理性を優先する風潮を横目にわが道を歩むのは意固地に見えるが、柔軟なアナログ的発想が生かせる場もありそうだ
▼60代半ばで隠居扱いでは実態に合わないのだろう。日本老年学会などが高齢者の定義を10歳引き上げ、75歳以上に見直すよう提言した。65歳から74歳は「准高齢者」。生涯現役、まだ働けるということらしい
▼年金支給年齢の引き上げにつながるなら考えものだが、アナログ時代に磨いた知恵と技術で激変するデジタル社会の落とし穴を乗り越えることもあろう。「アナログ世代の味や深みも捨てたもんじゃないよ」とデジタル音痴の当方はひそかに思っている。