<金口木舌>解釈は自由


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 カンダタは、どうなったのか。カンダタとは芥川龍之介作「蜘蛛(くも)の糸」の主人公。物語のその後を創作する名護市立緑風学園の取り組みが15日、「教育の日」式典会場で紹介された

▼作品の一つが目を引いた。「地獄を天国に」と思い付いたカンダタが、地獄を花が咲き乱れる楽園に変えたという続編。「今じゃ、どちらにいても皆が『幸せ』になれる」とのオチもいい。物語の解釈は自由だ
▼こうの史代さんの原作を片渕須直(すなお)さんが監督したアニメ映画「この世界の片隅に」が、キネマ旬報の本年度日本映画1位に選ばれた。アニメでは1988年度の「となりのトトロ」以来という
▼主婦すずを主人公に戦時下の広島・呉で明るく生きる人々の日常を描いた。面白いのは「いい反戦映画」と評価する声と「反戦ではないからいい」とみる声の双方があることだ
▼「はだしのゲン」と違って「反戦イデオロギーくさくない」との指摘もある。こうのさんは2012年に死去した「はだしのゲン」の作者で被爆者の中沢啓治さんへの追悼文で、「広島の宝」と評している
▼緑風学園に倣い、「この世界の片隅に」の続きを思い描いた。年老いたすずはつらい経験を語り戦争の悲惨さと反戦を周囲に訴えるのだ。現実に戻る。基地建設や戦争に反対するお年寄りの声に耳を傾けよう。すず同様、心に響くドラマが聞けるかもしれない。